イデコ(iDeCo)VS 小規模企業共済

いつもこのブログを読んでいただきありがとうございます。

福岡県糸島市で気軽に経営相談ができる税理士、小山知則です。

毎週金曜日にブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。お楽しみに!


イデコについて最近よくお客様からご質問をいただきます。
また、小規模企業共済との比較についてもしばしばご質問を受けるところです。
そこで今回は、両者のスペックについてご紹介したいと思います。

ちなみに、個人事業主である私自身が選んだのはイデコのほうでした。

基本スペックの比較

両者の共通点

・掛金が全額所得控除になる
・運用益が非課税
・受取方法が公的年金等か退職金扱いになる

小規模企業共済のメリット

・掛金の範囲内で7~9割で融資が受けられる
一般貸付だとが金利1.5%(無担保無保証)、10万~2,000万
注)借入により自身の掛金を取り崩すわけではございません

イデコのメリット

・投資する商品を自分で選べる

小規模企業共済のデメリット

・65歳以上15年以上掛金を納付しないと、受給権が得られない(以下、老齢給付という)
・20年以内の任意解約だと元本割れ

イデコのデメリット

・原則60歳まで解約できない
60歳を超えても70歳までなら
、非課税で運用ができる。積立はできない。
・投資なので思うような成果が出なくても自己責任

 

ざっくりいうと両者とも節税しながら、将来の年金や退職金を積み立てるといった感じです。

 

メインスペックの比較

ところで、一番気になるのは、小規模企業共済とイデコどちらが掛金をより増やせるのかということではないでしょうか?

小規模企業共済

共済金A※1
予定利率(利回り)1.4%程度

共済金B※2
予定利率(利回り)1%程度

※1個人事業主→死亡
 会社役員→会社の解散

※2個人事業主→老齢給付
 会社役員→老齢給付、死亡、疾病・負傷・65歳以上による退任

イデコ

ここでは、参考として私が投資しているファンドの直近10年の利回りを出しました。

ファンドA※3 7.8%(信託報酬控除後)
ファンドB※4 14.5%(信託報酬控除後)

※3インデックス型の某商品
※4アクティブ型の某商品

出典:モーニングスター株式会社

 

あくまでも過去の話で今後どうなるか分かりませんが、こうしてみると圧倒的なハイスペックです。
仮に3万円を20年積立て(元本720万円)たとしたら・・・

小規模企業共済は共済金Aが836万円、共済金Bが800万です。
対してイデコは、ファンドAが1,735万円、ファンドBが3,955万円です。
話にならない差が出ました(笑)

あくまで過去10年間の利回りが今後も続くと仮定した場合の話なので、未来はどうなるかはわかりません。
しかし、バランス型ファンドで世界経済の成長を取り込むような運用を行えば、
長期的スパンでみて小規模企業共済の予定利回りを下回るようなことは想定しにくいのではないかと考えます。

ではなぜ、小規模企業共済の予定利率はこんなに低いのでしょか?

データ比較

ここに興味深いデータを出しました。
GPIF※のデータと比較してみてください。

※皆様の厚生年金と国民年金を運用しているところ

平成28年度運用利回り

小規模企業共済:2.39%
GPIF:5.86%

過去10年間の平均利回り

小規模企業共済:1.83%
GPIF:2.89%
私のファンドA:7.8%
私のファンドB:14.5%

私のファンド>GPIF>小規模企業共済の順に利回りが高くなってます。

出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構年金積立金管理運用独立行政法人

ポートフォリオ分析

ここでそれぞれのポートフォリオ(資産配分)をみてみましょう。

・小規模企業共済
国内債券75.5%
国内株式4.8%
外国株式4.8%
その他14.9%

国内債券が圧倒的なウェイトを占めています。

・GPIF
国内債券31.68%
国内株式23.28%
外国株式23.12%
外国債券13.03%
その他8.89%

国内投資がやや多めですが、おおむねバランスよく分散投資されています。

・ファンドA(昨年12月現在)
外国株式46%
外国債券41%
国内債券7%
国内株式4%

外国の株式・債権にほとんど投資してます。

・ファンドB(昨年12月現在)
外国株式83%
国内株式12%
その他5%

ほぼ株式への投資で債権への投資をしていません

 

まとめ

いかがでしょうか?
小規模企業共済に関しては、共済金の支払いを確実に行わないといけません。したがって、そのほとんどが国債などの国内債券で運用されることになるため、運用効率は決していいとは言えない※と思います。
過去10年間の利回りが1.83%と低迷しているのがその証左かもしれません。

※基本的に債券は期限に償還するという性質(もちろん債券価格の上昇局面では償還前に売買することもある)のものでその収益は利息のみであり、経済成長を取り込めない。

今回比較に用いたGPIFについては、資産構成をみると一見バランスが良いように感じるかもしれません。しかし、基本ポートフォリオを国内の株式・債券で60%としており、やや日本経済に依存しすぎな感じがあります。過去10年の利回りも2.89%で今ひとつといったところでしょうか。
何よりわが国の公的年金は賦課方式となっており、負担と給付の問題があるため、若い世代が利回り以上の果実を得られるということは構造上あり得ない。

また、我が国が今後インフレ局面を迎えたときに、小規模企業共済の予定利率が物価上昇率を下回るのでは?という非常に大きな懸念があります。
確かに下記のように、日本ではもうインフレなんて起きないというような主張もあるかと思います。

①日本経済は流動性の罠※1に陥っているため、日銀の金融政策によってデフレを克服することは出来ない

②フィッシャー方程式※2により証明されるように、実質利子率が低い(例えばゼロとなっているような)状態で、物価が安定してれば(予想物価上昇率がゼロとなっている状態)、デフレ圧力が生じたときにおいて、名目利子率(この時点ではフィッシャー方程式によりゼロとなっている)をゼロを超えて下げることが不可能である

※1流動性の罠:利子率が現金保管コスト(債券にしなかったために失われる利息)まで下がると、貨幣も金利ゼロの一種の金融商品であるため、投機的目的の貨幣需要が無限大になり金融政策が機能しなくなる。

※2フィッシャー方程式
名目利子率=実質利子率+予想物価上昇率

私は経済の専門家ではないので、実際のところがどうなのかはわかりません。
しかし、昨日正しかったことが明日も正しいとは限らないというのが経済の世界だということは理解できてるつもりです。
今日まで続いたデフレが未来も続くかどうかはわかりません。
したがって、いつかインフレが起こるかもしれないという可能性を否定することはできません。
そのリスクに備える為にも、イデコで将来の備えを自分で作るということは非常に大切なことだと思います。

とはいえ、闇雲に商品を選んでもよいというものでもありません。
以前に私がイデコを選んだ基準なども書いてますのでご参照下さい。
ご参照)公的年金をあてにしてはいけない!若い世代はiDeCoで老後資金を準備しよう

 

今回は比較に際し過去のデータを多用いたしました。
過去がこうだったから未来もこうなるというのは根拠薄弱で私の最も嫌いな論法の一つですが、データとして比較するためには、他に用いるものがないので今回利用した過去データもあくまでも判断の一つとして捉えてくだされば幸いです。

 

次回以降も、皆様の気になる疑問を解決していけたらと思います。乞うご期待!

 

 

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「イデコ(iDeCo)VS 小規模企業共済」への2件のフィードバック

    1. おっしゃる通り、イデコには金融機関に支払う手数料が高いものがあります。
      しかしながら、
      ・加入時のみの手数料・・・口座開設手数料2777円(国民年金基金連合会への支払いで必ず発生)
      ・毎月の手数料・・・口座管理手数料167円(国民年金基金連合会と事務委託先金融機関への支払いで必ず発生)
      の2つの手数料で運用できるものがございますので、そちらをご選択されるのが良いと思います。
      あと口座管理手数料の167円は定額です。
      年金積立額が23000円の時、年金の積み立てを開始した直後は167円の手数料は0.72%ですが、加入から10年経過し、仮に年金資産の額が300万円になった時の負担率は0.0056%まで低減します。
      それに対して信託報酬は資産運用残高の数%といった手数料を負担することになります。
      したがいまして、狙っているリターンにもよりますが信託報酬が高いものには注意が必要だと思います。

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