いつもこの記事を読んでいただきありがとうございます。
福岡県糸島市で気軽に相続相談ができる税理士、小山知則です。
毎週金曜日にブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。お楽しみに!
相続税調査の状況
◇平成26年
相続税申告件数56,239件
調査件数12,406件(調査割合 約22%)
非違件割合 81.8%
◆平成27年
相続税申告件数103,043件
調査件数11,935件(調査割合 約12%※1)
非違件割合 81.8%
(参照:国税庁)
※1 平成27年は基礎控除額の大幅な引き下げにより申告件数が約1.8倍になったため調査割合が減少していると思われる。
上記のように、相続税の申告においては、税務調査になる確率が高く、申告漏れなどが税務調査で発覚する割合も8割超と非常に高いことが分かります。
中でも税務調査の際、最も問題になるのが名義預金ではないでしょうか。
申告漏れ相続財産の内訳でも現金・預貯金がダントツのトップです(2位の土地に比べても約2.5倍)
名義預金とされる基準
名義預金とは、例えば被相続人の配偶者や子・孫などの名義になってる預金などで、実質的にはその名義人固有の財産ではなく、被相続人の所有に属するものです。
おじいちゃんがお孫さん名義で通帳を作り預金してた場合などをイメージしていただければいいかと思います。
では、実際に名義預金とされる代表的な基準を3点ご紹介いたします。
①資金原資基準
例)
a名義人にその預金が可能なだけの収入がない
b被相続人の収入や預金が名義預金口座の原資になっている
②管理基準
例)
a通帳・印鑑・カードなどを被相続人が管理していた
b被相続人の口座と名義人口座の届出印が同じになってる
c名義人の婚姻後も口座名義が旧姓のままになってる
③運用支配基準
例)
a名義人口座開設届に書いた筆跡が被相続人のものと一致する
b名義人口座で行われた入出金伝票の筆跡が被相続人のものと一致する
c名義人がその口座の入出金についての意思や判断がない
d名義人がその名義人口座の存在を知らない
以上のような観点から総合勘案し名義預金とされると、被相続人の相続財産とみなされてしまいます。
名義預金?贈与?
名義預金とされないためには「贈与」をしっかり成立させておくことが重要です。
(民法549条)
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
贈与という行為が成立するには、一方の「あげますよ」ともう一方の「もらいますよ」という意思表示が行われていることが条件です(諾成契約)。
贈与税の申告をしているので贈与だという主張もあります。確かに贈与税の申告をしているということで当事者間に財産の無償の移転にかんする意思があったかもしれないということは推認されます。しかし、民法に定める贈与という法律行為を成立させるには、やはり契約書をしっかり作成したほうがよいでしょう。
名義預金とされないための7つの心得
では名義預金とされないための心得を7つご紹介いたします。
①贈与契約書は必ず作る
a贈与者※2と受贈者※3の印鑑はそれぞれ別々に
b受贈者が未成年の時は法定代理人※4が押印
cケースに応じて確定日付※5を付与してもらう
②金銭の贈与は振込で行う
③入出金伝票の記入や定期預金の書き換えは名義人本人が行う
④口座の開設は名義人本人が行う
⑤通帳・印鑑・カードは名義人本人が管理
⑥贈与者のプライベート資金の入出金を受贈者(名義人)口座で行わない
⑦贈与税の申告を行い、控えを保管しておく
※2 贈与者:財産をあげる人
※3 受贈者:財産をもらう人
※4 法定代理人:本人に代わって法律行為を行う者(親権者など)
※5 確定日付:公証役場で確定日付印をもらう。その日付にその文書が存在していたことが証明される。手数料700円。
名義預金について、「ばれないだろう」と安易に考えるかもしれません。
しかし、相続人の通帳は税務署によって簡単に照会されてしまいます。
相続税の税務調査では、名義預金の申告漏れが一番多くなっております。
名義預金とされないために、上の①~⑥の項目はしっかり押さえておきましょう。
次回も相続についての身近な疑問にもお答えしていきます。乞うご期待!