九州北部豪雨により亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
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福岡県糸島市で相続相談ができる税理士、小山知則です。
毎週金曜日にこのブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。


無償返還方式とは?

相続した土地に、自身の不動産管理会社を使ってマンションなどを建設するという節税がよく用いられます。
 この時に、最もオーソドックスなのが土地の無償返還に関する届出書を税務署に提出し、権利金の授受は行わず、土地の年間固定資産税額の2~3倍程度の地代を、法人が個人地主に毎年支払う方法です。

以下、土地の無償返還方式による場合において、最も多い「個人が地主で、法人が借地人」のパターンについてメリット・デメリットをまとめました。

メリット

①権利金の認定課税を防止できる

・法人:通常権利金を払うべき慣行がある※1にも関わらず権利金や相当の地代※2を払っていない場合、権利金相当額の受贈益が計上される。
しかし、将来借地人がその土地を無償で返還することが契約で定められていて、かつ土地の無償返還に関する届出書を提出すれば、認定課税は行われません。

・個人:所得税法上、通常収受すべき権利金を受け取らなかったとしても課税されません。

※1 借地権割合30%以上の地域・・・30%未満の地域は路線価図では見たことがありませんし、倍率方式の土地でも市街化調整区域など一般にはマンション等がそもそも建てられない地域になろうかと思います(笑)

※2 土地の更地価額のおおむね年額6%

②地代の認定課税を受けない

・法人:本来払うべき地代と実際払った地代の差額が貸借両建てされるので0(差額の地代と受贈益が両建て相殺される)

・個人:所得税法においては通常受け取るべき地代を受け取らなかったとしても課税されません。

③貸宅地として評価できる

将来、個人に相続が発生した場合その土地について自用地評価×80%の評価とすることができる。

④小規模宅地の特例の適用

将来、個人に相続が発生した場合その土地について、
特定同族会社事業用宅地なら400㎡までにつき80%の評価減
貸付事業用宅地なら200㎡までにつき50%の評価減

⑤個人の所得税負担を抑えられる

地代収入が固定資産税の2~3倍程度と格段に安いため、権利金や相当の地代を収受する場合に比べ所得税負担が少なくて済みます。

デメリット

①同族会社の株式の評価が上がる

将来、個人に相続が発生した場合、その同族会社の株式の評価上、その土地の自用地評価×20%が純資産価額に算入される。
しかし、類似業種比準方式との兼ね合いも含めて、非上場株式の評価については意図的に下げられる余地があり、メリット③④のほうが遥かに大きい。

②手間が少しかかる

書類の作成・提出、個人の確定申告などの手間がかかる。
しかし、相当の地代方式や権利金方式など他の方法を選択してもほぼ同様に手間はかかる。

賃貸借か使用貸借か

あくまで、上記③④のメリットが受けられるのは、その土地が賃貸借契約により貸し付けられている場合に限定されます。使用貸借の場合は自用地評価&小規模宅地の減額はなしです(-_-;)

では、固定資産税の2~3倍の地代は果たして賃貸借となるのでしょうか?

相続税関係個別通達(使用貸借通達)

使用貸借について、税法上は定義がありません。
そこで実務上は、無償又は地代が年間固定資産税額程度のものに関しては使用貸借として取り扱っている場合が多いのではないかと思います。
しかしながら、相続税関係個別通達において使用貸借とは、民法593条に規定する契約とすると明記されております。

民法上の使用貸借

使用貸借については民法593条~600条に規定されています。

(民法593条)
使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(民法595条1)
借主は、借用物の通常の必要費を負担する。

ここで必要費とは目的物の保存・管理・維持に必要とされる費用のことで、本条にいう「通常の必要費」とは、不動産の固定資産税などの公租公課や借用物の現状を維持するのに必要な修繕・補修費などをいいます。

法人税法上の事業の定義との関係

 固定資産税の年額の3倍以下である場合、法人税法上の事業に該当しない※3ため、税務上の賃貸借契約は成立しないという意見もあります。

しかし、その土地が貸宅地として評価され、なお小規模宅地の特例の適用があるかどうかの判断は、あくまでそれが相続開始時において、賃貸借契約によるか使用貸借によるかにより行われます。

そうであれば、上記相続税関係個別通達により使用貸借の定義が民法上の使用貸借の定義に委ねられているため、法人税法上の事業の定義との関係はないものと思われます。

※3 法人税法上は事業に準ずるものの定義として、「相当の対価」を得て継続的に行われるものとあります。
そして「相当の対価」の判断として、固定資産税の3倍以下の賃料は「相当の対価」に該当しないとしています。

まとめ

 いかかでしょうか?土地の無償返還に関する届出書を提出し、地代をいくらにすれば賃貸借契約として認められるのかについては、明確な規定はございません。しかしながら、使用貸借となってしまうのを回避するためには、上記民法595条1にあるように、借主が少なくともその土地の通常の必要費を超えて地代を支払うことが必須であるようです。

 したがって、個人地主が不動産所得の申告をする場合において、固定資産税・旅費・草刈りその他土地の維持管理費などの必要経費が賃料収入を上回っているような場合には、その土地に関しては使用貸借=自用地評価となり小規模宅地の特例の適用もないものと思われます。(地代<通常の必要費となるため、地主は使用収益に対する対価について収受していないものと考えられるため、使用貸借と認定される可能性が高い)

結局、その土地にかかる固定資産税その他の通常の維持管理費を超える地代を支払えばいいのであり、固定資産税の2~3倍は一つの目安に過ぎないと考えていいかと思われます。

 今回のケースのように賃貸借か使用貸借かにより取り扱いが変わり、その結果、税額差が非常に大きくなるものがございます。資産税については、様々な法的要素や事実要件が複合的に関連するため、そもそもの意味を理解せず漠然と慣習を踏襲してしまうと、思わぬ税負担が生じる可能性がございます。税務的な判断には常に法律的な裏付けとなる根拠を持たせるようにしましょう!

 

今後もこのカテゴリーでは資産税について専門的な情報もお届けしていきます。乞うご期待!