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福岡県糸島市で気軽に経営相談ができる税理士、小山知則です。
毎週金曜日にブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。お楽しみに!
国家は破綻する「日本は例外にはならない」!を読みました
著者は藤巻健史氏。モルガン銀行の支店長をしていた経済評論家で、現在は参議院議員になってます。
かなり強烈なタイトルですね^^
日銀は質的量的緩和政策の出口を失い、訪れるものはハイパーインフレと大幅な円安であると予想されています。
そして、ドル資産の保有や不動産投資などを推しています。
以下、同書の要旨と主張をわかりやすくまとめました。
現在の質的量的緩和とは何なのか?
①なぜ、日銀は質的量的緩和政策を行っているのか?
日銀当座預金のうち法定準備金を超える部分(フリーリザーブ)に0.1%の利息を付け、日銀当座をどんどん増やす政策をとる。そうすればいづれは銀行間市場から市中に資金がしみだしていくだろうと思うから。
②でも、なぜ今インフレになっていないのか?
銀行間市場にあるマネーが市中にしみだしていき、マネーストック(世に出回るマネーの量)が増えたときに、ハイパーインフレになる。
しかし今は信用乗数(マネーストック/マネタリーベース)が低下している。
マネタリーベースとマネーストックの連結器は貸出です。オリンピック需要などで貸出が増え信用創造が起こり、マネーストックは急増する。
現在そうならないのは、円高で景気が悪く、企業の借入意欲が低迷したままだから。
③量的緩和政策とマイナス金利政策は矛盾している
異次元の量的緩和とは、日銀当座預金を極大化すれば、お金が銀行間市場から市中に流れていくだろうという日銀当座預金残高の極大化政策、
マイナス金利政策は日銀当座預金へペナルティをかける。大きな残高を持つとペナルティが科されるという日銀当座預金の極小化政策なので180度異なる。
④国債は国内で消化されているから安全というのは間違い
戦時国債も100%日本人が保有していたと思いますが。ハイパーインフレで紙切れになった
⑤政府には資産が多くあるので実質的な純債務は少ないというのは誤り
即座に換金できる流動資産は多くない。
貸付金や出資金など比較的換金可能な資産についても多くがURや中小企業基盤整備機構などに対すもので政策的なもので民営化も難しい。また回収しようにもそれらの多くは現金をほぼ持たない。
⑥円安によるインフレ期待
大胆な金融緩和で市場にショックを与えることで、大幅な円安が実現する可能性を想定していた。円安が実現すれば企業収益が改善し、輸出や設備投資が増えるだけでなく賃金も上がる好循環が働く。と期待されていた。
今後は円安がかなり進んでいくと思ってます。
こんなに財政の悪い国の通貨がいつまでも信任され続けるとは思えないから。
そして円安が進行すれば、簡単にインフレが始まる
円が暴落すれば、日本の製品が外国に買われ需要過多になり、輸入品は高騰する。したがってハイパーインフレは起こる。円安にすれば需給ギャップなど簡単に解決する。
↓日銀が大量に国債を購入して銀行間市場にお金をばらまいているのでヘリコプターマネーとよばれることがある
質的量的緩和の出口問題について
①質的量的緩和からの出口はない
日銀が「資金供給量を絞る」、「金利を上げる」という手段を持っている限り、インフレはコントロールできます。しかし、異次元の質的量的緩和の最大の副作用は、これらの手段を失ったことにある。日銀は未来永劫貨幣量を増やし続けざるを得ない。利上げをしようと思えばできますが、日銀は損の垂流し(負の貨幣発行益の大量発生)にり、日銀倒産も現実的になる。
②負の貨幣発行益(負のシニョリッジ)
今後の金融引き締め時には、日銀当座預金の金利を上げるしか方法はない。しかしこの方法は将来日銀の支払利息が急増し、受取利息より多くなる可能性は大。
注)現在の国債の金利は非常に低いので日銀のバランスシートの資産サイドの国債の受取利息より負債サイドの日銀当座預金の支払利息が大きくなる。
③日銀は通貨量をコントロールできない(質的緩和=長期国債購入の弊害)
短期国債なら満期待ち(満期時に国債を返還し、現金を受け取る)という方法があるが、長期国債は満期がかなり先なので満期待ちができない。保有高を減らすためには市中に売却しなければならないが、理屈から言って暴落(=長期金利が暴騰)した後でないと、買い手が現れない。
④財政破綻は起きないかもしれないがハイパーインフレは起こる
政府が最終的には日銀を支配下に置いて、必要な紙幣を印刷し続けると思う。したがってCDS(クレジット・デフォルトスワップ)市場で定義する倒産は起こらない。したがってCDSレート※は低いが、貨幣が毎日天から降ってくればその価値はなくなる。
※デフォルトを起こす確率
⑤ハイパーインフレを予測する理由
異次元の量的緩和をした以上、利上げの方法は「日銀当座預金」に付利する金利の引き上げしか方法はありません。それが負のシニョリッジを発生させます。
中央銀行が債務超過の状態を放置することは理論上は可能だが、世界や日本国民が、その中央銀行や発行紙幣を信用し続けるか?といえば話は別。
⑥安倍政権は内心何を考えているのか?
積極的なインフレで貨幣価値を実質的に下げ、債務を目減りさせるインフレ税で財政問題を解決する。三本の矢ではなく異次元の質的量的緩和による一本槍政策。
尋常な方法で堅実に歳入を増やし、歳出を削減して財政を健全化するのが王道。しかしここまでくると王道ではもう無理だ、ということで、インフレ政策による財政再建の道を選んだのだと思われる。
感想
同書での氏の主張の要旨をまとめると以上のようになりました。
同書は、金融のロジックと同氏のディーラーとしての感覚が織り交ざったような内容で、飽きずに一気に読める感じでした。
硬い金融経済の書籍という感じではなく、私のような素人でもよく理解できる内容でしたのでおススメです。
需要と供給の均衡が取れている状況なら、同氏が主張する金融の常識が通じるのかもしれないと思います。しかし、現在の日本は相当に供給過剰な状態だと思うのです。
オリンピック需要などで一時的に物価が上昇するかもしれませんが、日本では構造的に需要が低迷する状態が続くという問題があるかと思います。
それは、生産年齢人口の減少と、消費意欲の高い若い世代の持つ富が少ないため、総需要が慢性的に少ない状態が今後も続くと思うからです。
個人的な意見ですが、もし円がその信任を失いハイパーインフレが起こるとすれば、「日本の財政赤字が今後も継続し続け、国債が国内で消化できなくなり(国の借金が、国民の預貯金と機関投資家などが国債運用する資産を超える)、もう日本に投資する他の国がなくなったとき」ではないかと思います。
ただ、今はそうなっていませんが、私には日本がその道に進んでいっているようには思えてしまうのです。
今後も、日々考えることなどもブログに綴っていけたらなと思います。
それではまた。