一時払い終身保険で相続税対策はちょっと待って!

いつもこの記事を読んでいただきありがとうございます。

福岡県糸島市で気軽に相続相談ができる税理士、小山知則です。

毎週金曜日にブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。お楽しみに!


配偶者が亡くなって死亡保険金を受け取ったときなどに、保険会社から良く勧誘されるのが一時払い終身保険です。また、退職金をもらい、そのお金で一時払い終身保険に入る方も多いと聞きます。

一時払い終身保険とは

一括で保険料を支払う終身保険(一生涯保証が続く)です。

また、初回一時払いのため保険料が月払いの場合に比べ安くなっております。

現在、円建てのものですと、高いものでも予定利率0.35%ほどです。

例えば1,500万円を一時払いして、25年後に死亡した場合、受け取れる死亡保険金は1,637万円(手数料控除前)ほどです。

生命保険金の非課税

生命保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象になります。

しかし、相続人が受け取った死亡保険金のうち次の金額までは非課税となります。

500万円×法定相続人の数

例えば法定相続人が子供3人の場合、500万円×3人=1,500万円が非課税となります。

それによる節税効果はおよそ下記のとおりです。

税率10%・・・150万円

税率15%・・・225万円

税率20%・・・300万円

税率30%・・・450万円

税率40%・・・600万円

税率45%・・・675万円

税率50%・・・750万円

税率55%・・・825万円

遺産が1億円、子供3人の方で、だいたい税率15%程度(225万円の節税)といったところです。
以下この方をモデルに見ていきます。

一時払い終身保険に入った場合の効果

例えば男性65歳で一時払い終身保険に加入したとします。

男性65歳の平均余命は約20年(85歳)です。

一時払い保険の予定利率が仮に0.35%として、85歳時の死亡保険金は1,609万円(+109万円)です。
税率15%程度だと生命保険の非課税による節税効果225万円と合わせてキャッシュフローは334万円のプラスです。
非課税枠を超えた分は相続税が課税される(税率15%程度で16万円)ので、
正味のキャッシュフローは318万円のプラスです。

でもちょっと待って下さい!

保険に入らず自分で運用した場合の効果

一時払い終身保険の保険料として支払おうとしていた1,500万円をそのまま運用したとします。
(この場合できるだけNISAなどの非課税口座を使うとよいです)

ここでは一例としてダイワライフバランス30※という投資信託をもってきました。

☆過去10年(年率)のパフォーマンス(モーニングスターより)

・トータルリターン3.62%(カテゴリー内ランキング上位36%)

・標準偏差が6.38(同16%)

・シャープレシオ0.56(同11%)

※リスクの小さい商品の中で内容が良いものを個人的に絞り込みました。
もちろん年齢やリスク許容度に応じてご自身のお好きなものを選んでください。

1,500万円を3.62%で運用した時の20年後の運用結果は3,055万円です。

したがって、キャッシュフローは1,555万円のプラスです。

ただし、資産が増加したので相続税はその分上昇します(税率15%程度で233万円)。
なお、相続人がその投資信託を相続し売却した場合、運用益に対して20.315%の課税(1,555万円×20.315%=316万円)が行われますので(取得費加算は考慮してません)、
正味のキャッシュフローは1,006万円のプラスです。

まとめ

いかがでしょうか。

一時払い終身保険で貯蓄運用したほうが生命保険の非課税による節税効果もあるため、一見すると有利なような気がします。
今回のケースでは318万円のプラス効果でした。

しかし、同時に保険料を運用しなかったことによる大きな機会損失がそれ以上に生じているのです。
今回のケースでは1,006万円が失われてしまいました。

その差は688万円(1,006万-318万)です。

因みに最高税率の人でシミュレーションしてもそれは逆転しません

 

一時払い終身保険には80歳や90歳でも入れる商品がございます。

したがって元気な60代70代の方が慌てて入る必要はありません

まずはご自身で運用して資産を増やして、80歳、90歳になってから一時払い終身保険に入る方がはるかに合理的な行動と言えるでしょう。

 

次回以降もこのカテゴリーでは相続税に関してよく誤解されていることなども書いていきます。
それではまた!

 

Follow me!

「一時払い終身保険で相続税対策はちょっと待って!」への7件のフィードバック

  1. 開 静子 (

    欲しい情報が取れて感謝しております。
    相続対策に七十八才の主人に一時払いの終身保険に入ろうと思うのですが、
    良い保険を教えていただけるか、サイトを教えていただければうれしいのですが、、
    先生のお話のようにうまく運用できるといいのですが、値下がりを恐れて踏み切れません。

    1. 開 静子 (大分市在住)

       いつも欲しい情報が取れて感謝しております。
      相続対策に七十八才の主人に一時払いの終身保険に入ろうと思うのですが、
      良い保険を教えていただけるか、サイトを教えていただければうれしいのですが、、
      先生のお話のようにうまく運用できるといいのですが、値下がりを恐れて踏み切れません。

      1. いつもブログを読んでいただいてありがとうございます。
        公然と、特定の保険やサイトを勧めることが難しいので、
        開様のアドレス宛にメールさせていただきました。
        ご確認いただければと思います。

  2. 始めまして、私は78才の主婦ですが無知で、昔の生命保険のつもりで1昨年、一時払いの生命保険に1000万円ずつ3口入りました。子供3人に残したい考えだったのですが・・・主人が亡くなり、自分に国民年金と主人の生命保険5000万円が残されているのですが人生100年時代になるとのTVでのコメントを聞く度に将来・自分の生活に資金不足が起きるのではないかと不安を抱く様になりました。もし足りなければ一時払いの生命保険を10年後に解約して自分の老後資金に変えたい気がしています。細かい契約内容を確認していないのですが、(マニュライフ・アクサ・メディコム)自分自身のために活用することは出来るのでしょうか?

    1. 花岡さんコメントありがとうございます。
      将来に漠然とした不安を感じていらっしゃるなら
      まずは資産寿命を計算してみてはいかがでしょうか?
      例えば年金収入が5万円、毎月の支出が20万円としたら
      5000÷(20-5)=333.33月
      333月÷12=27.77年
      となります。
      国民年金だけでも、5000万円の手持ちで
      105歳まで大丈夫という計算になるかと思います。

      また、一時払い終身保険保険の中途解約は可能かと思いますが
      一定期間は解約返戻金が保険料を下回っているものと思います。

      なお将来花岡さんが認知症を発症するなどして
      自由に財産をお使いになれなくなるリスクに備えて
      成年後見制度などを検討されるのが良いのではないかと思います。

      メディア情報だけでなく、
      先ずはご自身の資産寿命を計算してみて
      成年後見制度など必要な対策をしっかりと
      ご検討されてみられてはいかがでしょうか。

      1. 早速お返事ありがとうございます。私の生活費は知れていますが昔の家で(築40年)鉄筋コンクリート建てで、家屋の防水などに経費がかかるので資産寿命は想像以上に短い気がして不安です。一時払い生命保険に不用意に加入した事を今は後悔しています。成年後見制度は備えとしてとても大切なのはわかって居ますが身近に子供が住居しておらず・・・不安を抱けば限がありません。信頼できる弁護士さんが代行できると伺ったことが在りますが・・・確実なことは知りません。又是非お知恵を拝借させて下さいませ。

        1. ご自宅の改修費などイレギュラーな支出も
          今後はあるかと思います。
          私が花岡さんなら、
          一時払い終身保険は解約
          お金が寝てしまうので
          投信で運用(長期分散投資)
          ということになろうかと思います。

          また、成年後見人は家族である必要はないので
          成年後見業務に強い司法書士や弁護士などに
          依頼されてはいかがでしょうか?
          もし福岡にお住まいでしたらご紹介もできますので
          その時はまたご連絡ください。
          では失礼いたします^^

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP