いつもこの記事を読んでいただきありがとうございます。
福岡県糸島市で気軽に相続相談ができる税理士、小山知則です。
毎週金曜日にブログで私の専門としている経営と相続をメインに役立つ情報を綴っていきます。お楽しみに!
やってはいけない相続税対策
1、一般社団法人を使った節税
一般社団法人は持分の定めのない法人であるため、そちらに不動産などの個人の財産を移転すれば、相続税がかからないという極端な租税回避スキームでした。
しかし、平成30年税制改正大綱によると、一般社団法人の純資産額÷同族役員(被相続人を含む)の数に対し一般社団法人に相続税を課税することとなります。
米国ではすでに否認されていたスキームであり、いつかは法令の改正があると予想されていました。←ちなみに、以前勤めていた税理士法人の社内研修でこのスキームの問題点についてのプレゼンの担当が私だっだのを記憶しています(懐かしい)
2、持株会社を使った節税
持株会社を設立し事業会社の株式をそちらに売却することで、被相続人が事業会社の株式を直接持っているよりも、株式評価を下げて相続税を節税。
こちらについては以前のブログで詳しく書いてますのでご参照下さい。
→事業承継対策に持株会社(ホールディングス)スキームは黄色信号
3、低解約返戻型の保険
保険事故が発生していない生命保険の評価は解約返戻金の額で評価します。
例えば低解約返戻型の保険に加入し、解約返戻金の額が低いタイミングで自社株を贈与したり、子を被保険者とすることで契約者である親に相続が発生した時、解約返戻金の額で保険契約を子に引き継ぐこともできます。
しかし、高額な保険料でキャッシュフローが悪化する懸念があります。
また、解約返礼率のピークで解約できないと損失が発生し、そのタイミングでの課税負担のヘッジが難しいのも問題です。
4、愛人へ財産を遺す
生命保険の受取人を愛人にするということが以前はよくありました。しかし、保険業法の改正で愛人を保険金の受取人にすることはできなくなりました。そもそも保険金はみなし相続財産として相続税の対象になり、愛人は相続人でないので生命保険金の非課税財産にもならず、おまけに2割加算となり道義的にも?いい方法とは言えませんでした。
よく検討したうえでやっておきたい相続税対策
1、マンション建設
「不動産の相続税評価は時価より低くなります。マンション投資をしませんか?」
「借入は額面で財産から控除できます。今なら超低金利でご融資ができますよ!」
などと言ってマンション建設を勧められたときは注意しましょう。
収益性の低いマンションを建築したり、土地の利用価値が下がってしまうようなケースが非常に多いです。
2、一時払い終身保険
円建の一時払い終身保険については、現在販売停止となっているものが多く、外貨建て一時払い終身保険については為替変動リスクがあるため、リスクが容認できる場合の対策としましょう。
こちらについては詳しく書きましたのでご参照下さい。
→一時払い終身保険で相続税対策はちょっと待って!
3、贈与税の配偶者控除
婚姻期間20年以上の夫婦間では2,110万まで居住用の不動産などを贈与税の負担なく移転できます。しかし、移転コストが相続による取得に比べ割高であることと小規模宅地の特例が受けられなくなるなどのデメリットもあるのでよく検討してから行いましょう。
4、養子縁組
こちらについては以前のブログで詳しく書いてますのでご参照下さい。
→最高裁判決からみえた養子縁組を活用した相続税対策のまとめ
5、相続時精算課税制度の利用
こちらについては以前のブログで詳しく書いてますのでご参照下さい。
→事例を使った相続時精算課税制度の使い道
6、仏壇などの非課税財産を生前に購入
ほどほどにしましょう(笑)
7、組織再編
合併により会社規模区分を大会社や中会社へ変えて類似業種比準価額の割合を上げたり、或いは、会社分割により利益金額や純資産価額を引き下げつつ、後継者2人に会社を分けたりします。
組織再編については、適格要件をみたしているかどうかが肝になります。非適格になると会社の保有資産などが合併や分割時の時価で課税されるため思わぬ税負担が生じます。
やっておきたい相続税対策
1、暦年贈与
言わずと知れた相続税対策の王道です。
相続税の実効税率と贈与税の実行税率を比較しながら、計画的に行いたいところです。
2、教育資金の一括贈与・結婚子育て資金の一括贈与
①30歳未満の個人が直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合1,500万(一定の場合5,00万)まで非課税
②20歳以上50歳未満の個人が直系尊属から結婚子育て資金の贈与を受けた場合1,000万まで非課税
3、不動産管理会社の設立
不動産オーナーにおける相続税・所得税対策の王道です。
機会があればまた詳しく書きたいと思います。
4、含み損資産の売却
会社の遊休資産の中で含み損を抱えている資産があれば、売却損により自社株評価が下がりますので、自社株贈与などのタイミングで行いたいところです。
5、退職金の活用
前経営者が引退し、退職金を支払い自社株の評価が下がったタイミングで生前贈与を行ったりします。
死亡による退職の場合は、死亡退職金を支給し自社株の評価を下げたり、退職金の非課税の適用を使うこともできます。
番外編
1、名義預金となっているものがないか生前に確認しておく
こちらについては以前のブログで詳しく書いてますのでご参照下さい。
→名義預金とされないための7つの心得
税務調査でダントツで問題になるところです。
2、役員借入金の解消
会社への貸付金は額面で相続財産となってしまいます。
・債権放棄→繰越欠損金の額や他の株主へのみなし贈与に注意
・生命保険金の解約や遊休資産の売却などで返済原資に充てる
など生前にできることがあれば検討しましょう。
まとめ
いかがでしょうか?
今回はよくある相続税対策のうち18項目を挙げました。
ものすごくざっくり書いてます。
「やってはいけない相続税対策」として、一般社団法人や持株会社を利用した相続税対策を挙げていますが、当初予定されていた効果が、法改正によりなくなるということは税の世界においてはしばしばあることです。
著しく税の公平性を欠くような、或いは経済合理性を伴わないような節税対策については専門家であればそのリスクについて、きちんと検証しておくべきだと思います。
また、「よく検討したうえでやっておきたい相続税対策」については、他の相続人間とのバランスや、全体或いは現在と将来のキャッシュフローなどもシミュレーションした上でよく考えて実行するべきだと思います。
特に金融機関や不動産業者などでメリットばかり強調してくるような場合には要注意です。
「やっておきたい相続税対策」については、今回5項目しか挙げてませんが、他にもいろいろな対策があります。しかしながら、色々な角度から検討しないと対策にならないどころか、逆に損失を出すこともあり得るのが相続税対策です。
ご自身で勉強されたり、専門家のサポートを受けながらご自身のお考えに一番適した相続対策を行うようにしましょう!
今後もこのカテゴリーでは資産税について皆様の気になる情報もお届けしていきます。乞うご期待!